フレデリック・ショパン、出発を遅らせる理由その2、お別れ演奏会間近、コンスタンツァアの涙を胸に決心を固める…

出発前にやらなくてはならないことが沢山あった。日曜日、教会でコンスタンツァアに偶然会ったフレデリックは混乱する気持ちを落ち着かせなくてはならなかった。ティトゥスに短い曲をお別れに贈りたかったフレデリックは写譜する余裕も時間もないことをティトゥスに詫びた。
そして、イタリア語の教師のリナルディからフレデリックは厄介な頼み事をよくされて困っていた。リナルディの要望には答えられないフレデリックはその代わりにティトゥスから本を送ってもらいリナルディの気分を宥めて解決した。リナルディはティトゥスに本代は払わずに言葉でお礼を言った。それをティトゥスにフレデリックは伝えた。まだ、厄介な人たちがいた、コンスタンチン大公の副官で女たらしで有名なベゾブラフはリナルディに国のお金でイタリア語を習っているが、それは口実でベゾブラフ氏は全く勉強はしておらず、国の金を無闇やたらに使い込み、歌手のヴァウフ嬢に金銭をつき込んでいることをフレデリックは軽蔑していた。
オルフォスキの新作バレエに関しては2回見たフレデリックは、3回も見るに耐え難いと考え、御偉方が集まる3回目は自分は見るまでないと考えていた。演出はまあまあだが装置が大き過ぎ最悪と思っていた。コンスタンチン大公が三回目は臨席するため、さぞかし
派手な装置にお金をかけるであろうと、フレデリックは考察し呆れていた。
田舎にいるティトゥスに最後になるかもしれないワルシャワの知人や音楽界の状況を報告をした。そして、

 お別れ演奏会の準備に大事なことがあった、それは、
「その上、今日から大学の学期が始まるのです。エルスネルやビエラフスキ、譜面台、ヴァイオリン用の弱音器などを見に行かなければならない。
昨日、後者のことを忘れていたことに気づいたときはひどいショックを受けた。
これがなければ、私のアダージョは失敗に終わるだろう。」
エルスネル(先生)やビエラフスキ(指揮者)譜面台、ヴァイオリン用の弱音器を忘れてはならなかった…。
この弱音器がなければアダージョ(2楽章Romance (Larghetto) )のヴァイオリンの天使の羽のような柔らかな絹の光沢のようであり滑らかでしかもふわっとした優しい世界は創り出せないからだとフレデリックは考えていた。フレデリックの理想の世界を表現できるオーケストラもいないのだとフレデリックは諦めていながらも諦められなかった。
フレデリックは自信満々でありながらも、自分の構想通りに成功させることに心配が尽きなかった。
「ロンドは効果的だし 第1楽章のアレグロは印象的だ。ああ、この呪われた自画自賛!
しかし、私のこのうぬぼれを責めるべきは、誰かいるとすれば、エゴイストであるあなたなのだ。」何を準備していても心の内が
ジレンマに落ち入ってしまうフレデリックだ。一番頼りにしているティトゥスは田舎に引き篭もり現実には手伝ってはくれない。
「しかし、一つだけあなたの真似をしないことが私にはある。それは決断を直ぐにしないことだ。それにもかかわらず、私は、誰にも何も言わずに、静かに、土曜日の週には、泣こうがわめこうが膝をついて懇願しようが、
あなたの側を離れ、撤収する決心をした。」
決断を延ばす時間は終わった。
悩む時間も残されていない。
コンスタンツァアの涙は自分の胸にだけしまう決心がついたのか。
「そうして、私の音楽はナップザックに入れ、リボンは心臓の横に、魂は肩にかけたら、私は駅馬車に飛び乗る。」
フレデリックの手書きの楽譜、愛する人からの魂がこもったリボン、大切な物二つだけを身にまといいざ出陣!!

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Pianist由美子UNO が綴るショパンの情景

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