ℱ・ショパン《操り人形(マリオネット)の糸を切る時》
第三章:脅威の代償と、不敵な報告
その後、ショパンは音楽院で一度だけ演奏する機会を得る。
その一瞬の披露は、聴衆を熱狂の渦に巻き込んだ。しかし、その圧倒的な独創性は、保守的な作曲家教授たちに「自分たちの地位を脅かす未知の脅威」という恐怖を植え付けてしまう。
二度目の演奏申し込みは、無慈悲にも却下された。
実力を認めたがゆえの、卑劣な排除。
ショパンの胸に、激しい恨みの火が灯る。
しかしその火は、彼らを、そしてワルシャワの師をも凌駕する音楽を創り出すという、獰猛なまでの闘志へと変わっていった。
宿に戻ったショパンは、暗がりの中で羽ペンを走らせた。エルスネルへの報告の手紙だ。
彼は、自分が不法に音楽院を偵察したことも、演奏を却下された屈屈にも直接は触れず、
子供の頃からの癖である、ある「歪んだユーモア」を交えて文面を綴っていく。
自分のことを、まるで第三者であるかのように冷ややかに突き放して書く、彼特有の皮肉だった。
手紙の行間には、次のような暗号が滑り込まされていた。
「先生、私はカルクブレンナー氏の弟子から聞いたのですが……
彼らの狭いシステムは、私の音楽を縛ることはできません。
私は誰の手も借りず、この街で生きていきます」
カルクブレンナーの弟子——それは他ならぬ、エルスネルたちが裏で売り飛ばそうとした「ショパン自身」のことだった。
自ら足を運んで正体を暴いた事実をそれとなく隠しながらも、
「あなたが私をハメようとしたあの場所の虚飾を、私はすべて見抜いている」と皮肉混じりに告げる、恩師への完璧なアリバイを装った暗号。
それは、自分を意のままにコントロールしようとするすべての大人たちに対する、孤独な天才の、不敵で静かな宣戦布告だった。
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