F.CHOPIN、サンドとフレデリック分かれ道と癒しのマルキとの時間
ここは、ノアンの田舎のサンドの館・・・サンドが祖母から受け継いだ家なのである。
たとえ芸術家であろうとサンドの子供の教育のことまで家族ではないショパンに、サンドは口出ししてほしくないのである。ショパンはパリではサンドと恋人と噂されているが、ショパンは黙ってお金になる曲を書いていればいいのだ・・・。というのがサンドの本性なのだ。
ショパンとサンドの上下関係はサンドが上司でショパンは召使いよりは上だが、それ以上ではないのだ。
ショパンはというと、父親が道徳心を重んじる家庭に育った、そのため人情深さは父親譲りだったようだ。
父親ニコラスが亡くなってからも、「お前は人が好過ぎる」とニコラスからフレデリックは言われたように、フレデリックの性質は変わらないのである。
フレデリックはフレデリックで「あのお人好し」と両親のことを言っていたことがあった。
ショパンが路頭に迷わないための選択がサンドしかなかったにしろ、ショパンには情というものがあった。しかし、サンドは違っていた。ショパンとの偽りの家族の姿も現実が見えた来た。モーリスとソランジュも成長し、お金を散財して来たサンドにとって、ちょっとした諍いが引き金になるのだ。
ショパンが売った3曲の大金の使い道は不明だが、サンドの負債や当時の最先端だったセントラルヒーティングの工事に充てられたのかもしれない。
つまりは、ショパンがワルシャワの母や姉ルドヴィカの家族に返したいお金はサンド一家が食べてしまうのだ。
ローラ夫人も、そのことをルドヴィカから聞いて来たのであろう。サンドに大してお金を払わなかったのであろう。
彼女はポーランドの伯爵夫人といってもワルシャワ蜂起後、ポーランド貴族は財産を没収されて貧乏になっていた。ショパンを擁護するお金はなかった。そして、ローラ夫人もサンド一家の有様を見てフレデリックに、
「もう、あなたはサンドと別れたほうがいいです、サンドには、あなたの代わりになる男はたくさんいるけれど、あなたの人生の代役は何処にもいません。あなたの本当のワルシャワのご家族もそう伝えてほしいと言っています。」
と、彼女は忠告したに違いない。
ショパンとサンドは今、分かれ道の少し手前にいた。
真っすぐ一緒に行ってもショパンとサンドには行き止まりしかないのだ。
それでも、フレデリックは、ルドヴィカを心配させないように、書簡を書き続けた。
「今日は太陽が輝いていて、皆は(サンド一家)は散歩に出かけました。
僕は気が進まなかったので行きませんでした。
あなた(ルドヴィカ)と座っておしゃべりする時間にしましょう。
あなたは覚えていると思うけれど、小さい犬のマルキが私のそばにいて、僕のソファに横になっています。
マルキは並はずれて賢い犬です。
彼はフワフワした柔らかい白いコートを持っていて、サンド夫人は毎日、マルキの毛をブラッシングしているのです。そして彼は最高に頭が良い。彼の独創的な技を全部話し始めるわけにはいきませんが、
例えば、彼は金箔を張った器からは何も食べたり飲んだりしないのです。彼はそれを鼻で押しのけ、ひっくり返すことが出来るのですよ。」
ショパンは1年前の夏は、ジャックという名前の大型犬とソランジュと馬車で散歩に出かけたことがあった。今も、そのジャックが居たとしたら、何頭も犬がいるのだ。マルキは2年前ルドヴィカがノアンに来た時もいた小型犬だ。マルキという名前からして侯爵から貰った犬なのかもしれない。
白い小さい犬、マルチーズだったのかもしれない。
ショパンはサンド一家と一緒に出掛けないようにだんだんとなって来ていた。
ジャック・レイモン・ブラスカサット(1804年8月30日 - 1867年2月28日)
フランスの画家によるマルチーズ犬の絵画より
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